山陽立地・つれづれDEEP

10年にわたって書き散らかした事々を、この際一か所にまとめた

呉信一TBと伊川谷北を聴いた②TBてつくづく難しい(つのしんの独り言  2008.6.)

いよいよ、呉教授のステージであります。颯爽とTBを片手に前よりかなりふっくらとした姿が、舞台上手より現れた。その歩く姿が親父の呉幸五郎氏にソックリ生き写し。
体型からしてオヤジ譲りは分っていたけれど、浪人2年目の秋、どうしようもなく日々を過ごしていた私に、TBが足りないんだよ声をかけて下さり、連れて行ってもらった、全国大会・東京台東体育館で呉先輩の指揮でチャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」第3楽章スケルッオと行進曲で3位を取った際、勢いよく舞台に登場した姿にそっくり。クりソツ。
・・・演奏が始まった。トロンボーン協奏曲「カラーズ」(作曲アッペルモント)でイエロー・レッド・ブルー・グリーンの四色をテーマに、四つの楽章で構成されているとプログラムにある。
もちろん私などの知る曲ではsりません。しかし、レッドがきっと吹きにくいに違いないとの直観か働く。
元来、トロンボーンという楽器はその成り立ちからして、伴奏にまわる役割で、曲のテーマがさまざま変化してゆくバックで軽快・重厚なハーモニーを奏でるように出来ていると、ずっと思いこんできました。だって、トロンボーン教則本を例にとっても、当分山本正人著しかなかったように思います。
その練習曲もトロイメライ等しか載ってなかった。私自身ソロの楽しさを覚えたのは、大学生時代、大阪音楽団のバズーン奏者であった1年先輩の大崎健一氏から、JAZZBAND「セイバリーイン」参加を誘われてグレンミラーサウンドに夢中になってからのこと。
SWINGのDIXIEのとその後の人生を方向づけされたのもこの頃のこと。
そんなレベルの私にとって、呉教授のハイブリッドトロンボーンは全身を耳にして一音も聞き逃すべからずの宝物だ。
優雅に、激しく、優しく、厳しく、あくまでも美しく、囁くように、雄たけびを上げるように、演奏は流れてゆく。音質も中音域に特に深みがある。
高音がよく響く。どこをとっても申し分がない。そんな中、中盤で最もハイトーンの速いパッセージに少し音の掠れと狂いがあったように聞こえた。・・一瞬耳を疑いつつ、ああやはりそうなのかと一人頷く。
彼もやはりプレス派それもかなりのハードプレス・唇にマウスピース痕クッキリ派なんだ。ラッパの奏法にプレス奏法とノンプレス奏法がありますが、我々が習ったころはプレス主流の時代。
この奏法の利点は、音色に奥行きと味が出ること、JAZZなどには最適。しかし、永い演奏をしていると唇がバテテしまうのが欠点だ。だから、演奏本番前の練習もやり過ぎるとよい結果にならないことがある。
そのほどほどがまことに難しい。そのうえ3日も吹かないでいると唇が戻ってしまい、もとに戻すのにその倍の時間がかかる。
そんな厄介な奏法をノンプレスに換えようとやってみたこともあるけれど、これが全く別物で、たぶん習得には相当時間を要し、その間まともな音もだせなくなる。アマのわれわれが今更めざすところではありません。
たぶん会場でこれを聞きつけた人はほんの少し。ある意味ホットするものを感じて目を瞑る。こんな贅沢な時を過ごしていいのかな。また聞けるときがあるのかな。
・・深いため息とともに、腕組みをして席に身を沈めるのが精いっぱい。感動を独り占めだ。ご両人に本当に有難う。夢私めが聞き耳を立てていることを気づかれる心配もない。・・・拍手