NHK龍馬伝の毎回必ず姿を見せるのが山内容堂である。御隠居様、老候と言われているが、まだ33歳の筈。しかし、近藤正臣演じる容堂の髪はかなりの老人を彷彿させる。人物考証もしっかりやって欲しいもんだ。
その容堂は井伊大老から一橋派とみなされて土佐藩品川下屋敷で安政6年9月4日から文久2年8月11日まで37ヶ月謹慎させられている。
謹慎生活といってもあまり応えた様子は無く、漢詩と酒を愛した酔鯨公の名に恥じぬものだったようだ。
しかし、桜田門外の変で井伊直弼が首を打たれるの知らせに接するや否や、次のような詩を詠じ本心を吐露している。
亢龍喪元桜花門 亢龍元(くび)を喪う桜花門(おうかもん)
敗鱗散与飛雪翻 敗鱗は散り飛雪となって翻う(まう)
腥血如河雪亦赤 腥血河の如く雪亦赤し
乃租赤装勇無存 乃租の赤装勇存する無し
汝到地獄成仏否 汝地獄に到りて成仏するや否や
万頃淡海付犬豚 万頃(ばんけい)の淡海犬豚に付せん
多分大雪の朝、品川下屋敷で雪見酒を煽っていた容堂のもとに桜田門外の変が伝えられた直ぐ後に詠んだに違いない。
乃租とは先祖の事であり、赤装とはかの有名な武田の赤備えをいい、井伊がその遺臣を多数召し抱えて赤具足として勇名を馳せていた。その赤具足の勇者などおりはしなかった。お前は地獄に落ちて、成仏など出来る筈が無い。淡海(琵琶湖)など犬豚にくれてやれと罵る。
相当恨みは深かったようだ。