山陽立地・つれづれDEEP

10年にわたって書き散らかした事々を、この際一か所にまとめた

貿易赤字の意味するもの(週刊ダイヤモンド転載)

製造業の海外拠点拡大は貿易赤字定着の要因となるが、一方で拠点から国内への配当や収益の取り込み分を増やす。「こうした直接投資の収益は、これまで海外所得の中心であった債券からの利息より収益性が高い」(鈴木準・大和総研主席研究員)。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、サプライチェーン回復による輸出増で12年度に貿易黒字に復帰した後、15年度に再び貿易赤字に転落するものの、所得収支黒字の拡大で20年度時点でも、経常収支は9.1兆円の黒字を維持すると予想している(上のグラフ参照)。

 ただ、経常黒字が維持されるからといって、財政赤字を放置していいわけではない。「経常黒字でも、市場が資金繰りがつかないと見れば日本国債は売られる(価格が低下し利回りは上昇)」(河野龍太郎・BNPパリバ証券経済調査本部長)からだ。

 日本国債は、国内投資家が90%以上保有しているから安心という理屈も、じつは通らない。国債先物市場の売買の4割を外国人が占めている。外国人が売り崩し(価格が下がれば利回りは上昇)を仕掛けることは難しくない。経常黒字の安泰さと裏腹に、日本国債の利回り低位安定は非常に脆弱な基盤の上に成り立っている。