山陽立地・つれづれDEEP

10年にわたって書き散らかした事々を、この際一か所にまとめた

東北の三大桜を訪ねて⑬斜陽館を訪ねずして

20歳のおれならば多分バスを飛び降りていたことだろう。北へと向かう101号線の分岐。右へとれば「斜陽館」の表示あり。しかし、バスは非情にも左へと進む。せめて館の前を通り、一目だけでも斜陽館を見ておきたいとの、ささやかな願いは打ち消され、今やかなり色褪せた桜への想い。金木小学校の校庭を見下ろしながら、バスは芦野公園に到着。この公園も今や桜祭りの真っ最中とか。繰り出した人々は、桜よりもギッシリと立ち並んだ露店に群がる。この光景は日本全国みな同じだなあ。あろうことか、公園随一の紅枝垂れの枝下に、ブルーシートで囲った屋台あり。これだけは許せないと思った。商売人も美意識を持たなくっちゃ。噴水の水面を覆う桜の花びら。なおひらひら散り盛る向こうに津軽鉄道芦野公園駅を見つける。s-CIMG7326.jpg五所川原ー中里間20Kを走る津軽鉄道は旅情漂う景色の中、夏は
風鈴列車、秋には鈴虫列車、冬になるとダルマストーブが社内に設置されストーブ列車となります。春は線路の両側に桜が並び立ち、今散る花びらがベールを掛けたように舞盛る。その時、線路に伝わる列車の響き。思わず線路わきまで駆け寄った目前を、黄色い車体に、緑のラインが引かれた5両連結の電車が通り過ぎてゆく。その時目に飛び込んできたのが「走れメロス号」の文字。斜陽館への立ち寄りを断念した私を慰めるかのように、その文字を記した電車はスピードを増して、五所川原方面に走り去ってゆく。「走れメロス」の話はあまり好きになれなかったけれど、人間長い距離を走る間に、さまざま、いろんなことを考えながら走るんだとの点では実感を共有できたものです。サッカーの練習のUP時の鬼の先輩が発するもう何度目か分からない最後の一本の掛声を聞きながら、頭の中はいろんなことを考えていたもんです。