山陽立地・つれづれDEEP

10年にわたって書き散らかした事々を、この際一か所にまとめた

切ないサッカー・ファべーラの十字架

今の年までやはり一番好きな事と云えばサッカーとなる。小学4年から始めて、なんと大学に入ってから本格的にトレーニングした中で、しんどいとか辛いとか思ったことはあっても、切ないという気持ちだけは経験しなかった。
ところが、先日観たリオのサッカー事情のBS番組。「十字架の街・ファべーラ」を観てから、サッカーと一人の人間との関係がこれ程切ない事もあるんだと知らされて、ある種のショックを受けている。我々が登山電車に乗り込んで辿り着いたコルコバードのキリスト像から見下ろすファべーラ。
これこそ100万と云われる住民が住むリオのスラムの中でも、ギャングの抗争が激しい事で知られている。
その斜面に張りついた家並みの中腹にサッカーグランドがあって無料のサッカースクールが開かれている。子供達は学校にも行かず、ひたすらこのグランドでのサッカーの練習に励む。殆どの子供達は裸足で走り回る。やっと支給されたシュウズを履いている者も殆どが友人と共有。8歳から18歳の少年たちが練習と云うより、そのプレーをスカウト達に見せ付けるために行っている。ひたすら、このスラムから抜け出して成功したアドリアーノを夢見ながら。
今、注目されているのは通称ぺッタ(おしゃぶり)12歳。その足技は神の恩寵を受けるものとして全スカウトの注目の的となっている。問題はその神が何時まで彼を覚えてくれているかだとナレ―ションが入る。何しろこの街ではサッカーの才能を認められて有名クラブのジュニアにスカウトされるか、ギャングの使い走りから始めて、彼らの云う「あっち」の人間となり、悲惨な運命の内に若くして死んでゆくしかない。
そんな子供たちの中で一人19歳となった青年は、頻りにあっちの人間から誘いを受けながら最後の望みを託して今日もグランドでプレーする。通称ベイビーは12歳の頃、有名クラブの誘いが有ったがセレクションの会場へ行く電車賃300円が無くて、せっかくのチャンスをフイにしている。
写真の彼は金髪に髪を染めているが、これはあっちに行った青年が好んでするヘヤースタイルだ。
まさに運命の分かれめに立ってスカウトの声が掛かるのだけを祈って走り廻る。なんとも切ない。