山陽立地・つれづれDEEP

10年にわたって書き散らかした事々を、この際一か所にまとめた

時空の果て・物理学で心も解く

 宇宙物理学者・佐藤勝彦氏の宇宙論を少し齧ろう。
佐藤先生曰く「人間は誰しもふと自分の存在理由やこの世での立ち位置を知りたくなることがあります。
自分がどんな存在かを知る。それこそが科学の目的です。その極みが宇宙論と云えるでしょう」。
宇宙の歴史は137億年。その果てに人間、そして自分がいるわけだ。
もう少し書き加えると、これに何故自分が自分であるのかということが、一番の不可思議。
人生不可思議と遺書して華厳の滝に飛び込んだ学生の悩みもそこにあったのではないかな。
その学生も自分自身の存在を宇宙の果てのと受け止めれば、まさか飛び込みと云う物理的手段を選ぶことはなかったろうに。

宇宙は「無」から突如生まれ、直後に急膨張して火の玉のビッグバン宇宙へとつながったと考えられている。
宇宙創生の理論は小難しいが、般若心経の「色即是空、空即是色」にも、一脈通じるんだそうだ。
無と有の世界が混然一体というのは色即是空の考え方に似ていて、色というのは存在、空というのは無という意味で。存在と非存在は合い入れない訳ではなくて一体という考え方だそうだ。

無から生まれる宇宙はひとつに限りません。さらに宇宙が枝分かれして物理法則の違う子ども宇宙や孫宇宙が生まれる可能性もある。宇宙はこれまで考えてきたユニバースではなく、マルチバース(多元的宇宙)と云うのが現代の理論の予言だ。
お互いの宇宙は因果関係が切れていて観測で確かめようもないんだとか。

たまたま我々の宇宙は生物や人間が生まれるのに絶妙な物理法則や条件を備えている。その特異性をどう説明するのか。宗教は創造主たる神を持ち出すが、佐藤先生は全て物理法則がもたらした偶然と仰る。
宇宙全体の森羅万象を説明する物理法則を究めようとするのが物理学者で、「人間の心とか自由意志の問題にも物理学が挑むべきだ。心は生物学の問題と思われますが、そうではないのです。」

この世はすべてが物理法則に従って動いている。にもかかわらず人間は自分勝手に考え動いている。
自由意志は物理学と矛盾しているかのようです。物理学の体系を考えればこの矛盾は根源的ですし、答えは今は出せないが、ただこの矛盾は物理学で解けると思っている。
生命がどの段階で自由意志を獲得したのか、脳科学の研究も必要でしょう。弁証法と同じで矛盾があれば、それを統一した理論ができる。矛盾がなければ新しい世界は開けてきません。・・・とのことです。