山陽立地・つれづれDEEP

10年にわたって書き散らかした事々を、この際一か所にまとめた

龍馬最後の五日間・その思う事③

龍馬は通貨発行権を握って、恒常的な朝廷軍を作れるまでは、幕府と戦端を開けないと考えていたかもしれない。紀州藩をせっついて八万両を手に入れても当座の軍資金を賄うに足るかどうか。無から有を生みだすしかない局面で、朝廷の資金をどう確保するか。この一点に龍馬の考えは集中していた。
その一方、林謙三に「もう戦いは避けられぬと思う]と語ったり、もし戦いになったらどうするかと尋ねられると「蝦夷地へ海援隊の船を回して、暫く様子を見よう」とも言ったりしている。
また林謙三に「修羅か極楽か」と書き送っているように、戦争になったら死ぬ気で戦おうとおもいつつ、くちさきでいろいろ言いながら、戦争を避けるために説いて歩いている状態が暗殺当日まで続くことになる。

一方、政権を投げ出してくれた慶喜にたいしての龍馬の考えに、慶喜に関白職を用意しようとした形跡が伺われる。
松平春嶽公の側近だった中根雪江が書いた日記に『私云。切に接するに龍馬の秘策は、持論は内府公関白職の事か』とある。
中根が想像するには、慶喜公を関白という形で祀り上げることによって、戦わずして幕府を滅ぼすことが出来る。関白になることで、軍隊の権利や外交の権利も喪うのに慶喜だけは生き残れる。関白は実権こそありませんが、内大臣の徳川将軍でいるより官位は上となる。
慶喜の名誉は守られ、彼が信奉する水戸学の朝廷尊重も叶う事になる。

こうやって、永井を窓口に慶喜の遠隔操作を試みる。慶喜の為と云いながら、徳川の権力を自然消滅させる方向に導こうとしていた。