山陽立地・つれづれDEEP

10年にわたって書き散らかした事々を、この際一か所にまとめた

モラトリアム法 24年3月期限迫る

めっきり不動産の流れが悪くなっているように感じるこの頃、関東では銀行の奇妙な動きが見られるという。
それは野田佳彦政権が誕生した直後から、銀行が不良債権処理を急いでいる様子が各所の報告として挙がってきている。
それまで売却を渋っていた担保不動産を一転値下げ売り急ぎに転じてきた。これが単に一部の銀行に見られるのではなく、全国的な動き現象となっている。

いま一体何が起きているのか。
ことはどうやら中小企業の事業主や住宅ローンの借り手を支援するため2009年12月に施行された「モラトリアム法(中小企業金融円滑化法)」の期限切れが来年3月末に迫っていることにある。
当初、2011年3月末までの時限立法だったこの法は、一年間延長されて今日に至っている。しかも財務省に取り込まれたとされる野田首相と元大蔵官僚の吉川元久経済財政担当相と言うコンビからこの法の再延長は無いとの観測が広がり、期限切れ前に不良債権を処理しておこうという動きに違いない。

このモラトリアム法は亀井静香のごり押しにより成立した稀代の悪法と言っていい。
なにせ中小企業の経営者や住宅ローンの借り手から編成の一時猶予や金利引き下げのなどの相談があった場合、それに応じる努力義務を金融機関に課したもので、その処置を施した後、借り手が破たんした場合は貸し倒れの40%を公的に保証するという内容だ。その上「モラトリアム法を活用する企業を当面、正常債権として取り扱う」という金融庁が好餌を仕掛けた。
銀行にとって厄介なお荷物の破綻懸念先がモラトリアム法救済中は正常債権とされ、要管理先や破綻懸念先に分類された場合の貸した額の無担保分のそれぞれ20%、70%の貸し倒れ引当金を積む必要も無くなる。

当初、モラトリアム法を利用すれば「あの会社の経営は厳しい」と金融機関から見られ、本当にお金が必要な時に貸してくれなくなるとの懸念があって利用者は少ないと言われていた。

ところが実際には多くの中小企業がモラトリアム法を利用した。その訳は借り手側だけでなく、貸して側・銀行にとっても大きなメリットを見逃す手は無いと雪崩を打って利用者を増やしてしまった。
おまけに健全経営をしている中小企業まで巻き込んで貸付条件を変更緩和した。
結果、中小企業実行件数は2011年3月末までに累計165万961件。実行額累計45兆3849億円。
何時もながら、金融機関こぞって我先にモラトリアム法に走ったことがはっきり分かる。これはなんと日本の年間税収額に匹敵する。

もし今観測されるようにモラトリアム法が再延長されない場合、来年3月末どうなるか。
きっと、この45兆円の中身は資金回収が困難な不良債権が山のように積み上げられているに違いない。
モラトリアム法という生命維持装置を外された中小企業は、借りていた金額の元金と金利の返済を強く求められ、即刻臨終の憂き目を見ることになる。
かくなれば大変なのは自己責任の企業もだが、小康を楽しんでいた金融機関も貸し倒れ引当金の積み上げに顔色を変えて走らねば、今度は自身が危うくなる。
かくして担保不動産の処分を急ぎ現金をプールしなければならないわけだ。
おまけに、焦げ付いた債権の40%は国の保証すなわち税金の投入でけつを拭かされる。
いつの世も金融機関の小賢しさとそれを利用する政治の波に庶民は翻弄されるのみ。、